はじめまして、私立い草学園の学園長、「良草 香織(よいくさ かおり)」です。

「い草」は、日本文化にとって切っても切り離せない、大切な植物です。 私の若い頃は、どこの家にも畳敷きの和室があり、家の香りといえば、まず「い草」の香りを思い浮かべたものです。 しかし、畳離れが進んでいるせいか、最近の若い方の中には「い草」の香りどころか名前もご存知ない方もいるとか……。 そんな方にも是非、「い草」の名門である本学園で 「い草」の素晴らしさや面白さを存分に学んでいきましょう!

「い草」ってどんな植物?
湿地や浅い水中に生える、単子葉植物イグサ科の植物で、 植物学的にいうと緑黄植物に分類されます。 日本では昔から、畳に使われている植物として有名です。
実はとってもグローバルな植物!?
「い草」は日本だけに生えている植物ではなく、世界各地に分布しています。 「い草」の仲間は約230種類あり、その中でインド産のものがシルクロードから朝鮮半島を渡り日本に入ってきたと言われています。
踏まれ続けて1300年? 「い草」と畳の関係
「い草」が敷物として用いられ始めたのは奈良時代くらいからだと言われ、「畳」という言葉も古事記(721年)の中に見ることができます。平安時代以降、現在のような形になったようですが、この時代の畳は大変貴重なもので天皇や貴族の屋敷にしか使用されていませんでした。大きな町では江戸時代後期より普及していたようですが、農村部や小さな集落などにまで普及し始めたのは明治時代以降で、畳の歴史は1300年以上ありますが、一般人にまで普及したのは、実は最近のことのなんですね。
「い草」の正式名称って?
「い草」の学術名はJuncus effusus L. var. decipens Buchen.という大変長い名前です。Juncusとはラテン語で「結ぶ、しばる」という意味があります。英語ではrush, soft rushと呼ばれています。ちなみに外国の人に畳って何?って聞かれたら英語でどういう風に説明しますか? Tatami mats are traditional soft rush mats that are still found in almost all Japanese houses. (畳は昔からある「い草」のマットで、いまだに日本の大半の家で見られるんですよ。) こんな風に説明出来れば、かっこいいですよね^ ^)/
「い草」の和名は「イ」?
学術名はJuncus effusus L. var. decipens Buchen.と非常に長い「い草」ですが、実はもっとも短い標準和名「イ」としても知られています。「イ」と呼ばれるようになったのは、畳表では縦の糸を経糸、横を「イ」と呼ぶのでこのことから「イ」と呼ばれるようになったとか、蓆(ムシロ)にするものであるので「イ」(居)と名付けられたなど諸説あるようです。かつては、ランプの灯心用にも使われたため、灯心草(燈心草)とも呼ばれています。
「い草」は夏の季語って本当?
「い草」(藺草)に関する季語はいくつかあるようで、夏の季語のひとつです。 藺の花・藺草・燈心草・燈心草の花・藺田、藺刈などがあげられます。 現代俳句協会「現代俳句データベース」を検索してみると 「軽鳧の子が灯心ぐさを分けてくる」 西野文代 「灯心草たばねて土橋木橋過ぐ」 秦夕美 「燈心草日暮れ人の名呼ぶやうに」 たむらちせい 灯心草という表現が通っぽいのかな?みなさんも「い草」で一句詠んでみませんか?
「千の風になって」と「い草」の関係?
みなさんご存知「千の風になって」という歌ですが、もともとは「Do not stand at my grave and weep」というアメリカの詩(作者メアリー・フライ)がオリジナルだと言われています。その詩の中に、 ”When you awake in the morning hush, I am the swift uplifting rush Of quiet birds encircling flight.” と、”rush”(い草)が使われている部分があります。日本語にすれば「あなたが朝の静けさの中で目を覚ました時には、私は静かに飛び回る小鳥達とともにたなびく灯心草のようにあなたを見守っています」(園長の意訳)という感じでしょうか?とてももの悲しい別れの描写をしているこの部分は、「千の風になって」の歌詞には使われてないんですね。残念。
CO2を吸いまくる!? 「い草畑」が地球温暖化防止のカギ!?
1反(1,000㎡)あたりの「い草畑」は、一年間で約1.6tのCO2を吸着すると言われています。これはひとりの日本人が一年間に排出するCO2量の約16%に相当します。「い草」のCO2吸着のパワーってすばらしいですね。
新聞に掲載された新事実! 畳部屋にいると頭がよくなる!?
2008年4月12日の朝日新聞*にて掲載された、北九州市立大学の森田准教授の調査によると、畳を敷いた教室で児童323人に算数の計算をさせたところ、解答数が14.4%アップしたそうです。この調査結果からわかるように、畳の「い草」の香りには集中力をアップさせる効果があるようです。「い草」の香りに含まれる成分には、樹木にも含まれるフィトンチッドやバニラの中に含まれるバニリンなどがあり、リラックス効果もあるそうです。テスト勉強や受験勉強などに、「い草」の香りを取り入れてみるのもいいかもしれませんね。

※2008年4月12日朝日新聞掲載記事
月へ行くには、「い草」は何本必要でしょう?
人類が月面で生活するのもそう遠くないといわれる現代ですが、仮に月まで畳の上を歩いていったら何枚の畳が必要か考えてみましょう。まず、畳を1畳作るのに必要な「い草」は、等級によって異なりますが、約3000~7000本と言われています。ちなみに本数が多いほど良い畳とされています。 地上から月までの距離は約38万キロと言われていますので1畳を3尺6寸(約91cm×182cm)とすると2億1千枚必要です。 仮に畳1枚に5000本必要だとすれば、1兆1千億本の「い草」が必要です。「い草」の作付面積は年々減少していますが、1兆1千億本もいぐさがあれば、地球温暖化も防げるかもしれませんね。
大腸菌が逃げ出す!? 「い草」の抗菌性。
食中毒に代表される、大腸菌O-157やサルモネラ菌ですが、実は「い草」には、これらの食中毒を引き起こす細菌に対して、抗菌効果がある事がわかってきました。その他にも、枯草菌、腸管出血性大腸菌など、様々な細菌に対して抗菌効果がある事が、北九州市立大学の森田准教授の研究によってわかってきています。
データが語る。 「い草」(畳)で部屋がジメジメしない!
日本の夏は高温多湿で部屋がジメジメして嫌ですよね。しかし、そんな夏のジメジメが、「い草」のパワーで解消されるって知っていましたか?表1は畳を敷いた部屋(和室)とフローリングの部屋(洋室)で、湿度がどのように変化するかを表したグラフです。グラフを見てわかるように、雨天で湿度が上がった時でも畳のある和室では湿度の変化があまりありませんね。 これは「い草」の内部構造が多孔構造、いわゆるスポンジのような構造になっているからです。湿度が高くなると無数の孔が湿気を吸い取り、湿気を蓄えます。逆に、乾燥してくると蓄えた分を放出し、空気の湿度を調整します。 次にやってくる夏のジメジメには、お部屋に「い草」を取り入れてみてはいかがでしょうか。
一本背負いされても痛くないのは 「い草」のおかげ?
柔道で畳を使い始めたのは、修行者の安全のためと言われています。現在ではより弾力性に優れた畳が開発されていますので、「い草」の使われている本畳は使われていません。そのおかげで投げられても痛くないんですね。
「い草」でオシャレ! 畳だけじゃない、「い草」の活用方法。
スリッパやラグマットなど、最近ではいろいろな製品に「い草」は使われています。どれもデザイン性豊かで、爽やかな「い草」の香りもその魅力のひとつですね。 余談ですが、Tokyo-igusaで販売している、 ルームフレグランス観葉植物アートパネルなど、 どれも素敵なので是非一度ごらんになってみてくださいね。
「い草」は食べられる!?
ご存知の方も多いかと思いますが、「い草」は実は食べられるんです。昔は薬草としても使われていた「い草」は緑黄色野菜ですのでそのままでも食べられないことはないですがアクがあり、繊維質が多いので粉末にして他の食品と混ぜると食べやすくなるんです。「い草」の生産日本一の熊本県八代地方では、「い草」を使った料理をメニューに取り入れるお店が増えきているとか。最初はまんんじゅうやお茶から始まった「い草」食品も麺類やお酒やアイスクリーム、青汁などさまざま。あなたもオリジナルの「い草」レシピを考案してみませんか?